カテゴリ: 水難事故



3月20日、
私の地元の漁港で不幸な事故が起きてしまいました。


水難事故の怖さと水辺の危険性について書かせてもらいました。
たくさんの方に読んで頂き、拡散のご協力をして頂きました。
ご協力ありがとうございます。

前回のブログを読んで、

・安全について考えるきっかけになりました。
・水辺に近づく時は気を付けます。
・ライフジャケット買います。

などのお言葉を頂きました。

水辺の危険性について少しでも考えるきっかけになったみたいで良かったです。



あの事故から約1週間。

たくさんの人から心配のメッセージ・励ましのメッセージを頂きましたので、現状の報告をしようと思います。

父は救助の際に船にぶつけた肋骨付近に強い痛みが残っているらしく、歳のせいもあり治るまではまだしばらくかかりそうですが、病院で検査済みのため問題なし。

自分は水に濡れた成人男性を30分以上も1人で持ち上げ続けていたため、全身は酷い筋肉痛。
左腕の靭帯も少し痛めてしまった。
今もまだ身体中に痛みはあるものの、
まあ、人生で怪我らしい怪我をしたことがない頑丈な身体の持ち主なのでさほど問題無いです。

あれから、色々な人がメッセージをくれたり、お見舞いに来てくれたりした。

中には亡くなった彼の同級生の方達からもメッセージが来た。

今回の事故では結果的に彼を助けられなかった。
なので彼の周りの人達からは何を言われても責められても全て受け入れるつもりだった。

だが、同級生の方達からは

『救助にあたってくれてありがとうございます。』

『早く引き上げてくれたので綺麗な姿で家に帰ることができました。ありがとうございます。』

『鈴木さんは悪くありません。自分を責めないで下さい。』

と暖かいメッセージを頂きました。
正直、気持ちが凄く楽になった。

メッセージの文面からはこちらへの気遣いと同時に、彼が周りの人達から慕われていたのがひしひしと伝わった。

そんな彼を助けることが出来ず、彼の周りの人達には本当に申し訳なく思います。


そして今回、多くの方々から
『釣り、やめないで下さいね!』
とのお言葉を頂きました。

正直、ここ数日は肉体的にも精神的にも釣りどころではなかったし、行きたいとも思わなかった。

でも、事故のせいで釣りに行けなくなったなんて言ったら彼の家族や周りの人達は負い目を感じるだろうし、彼自身にも申し訳ない。
気分も少し落ち着いてきたので今夜あたり少しだけ釣りに行ってみようと思います。




・お酒を飲んだら水辺には行かない。
・服を着たまま落水したら泳ぐのは困難。
・必ず助けが来るとは限らない。
・釣り人は普段から水辺に近づく頻度が高いので必ずライフジャケットを着用しよう。
・子連れの場合は子供にもライフジャケットを着せよう。
・自然を前に油断・慢心は禁物。


少しでも多くの
水難事故が
減りますように。

















次回のブログからは通常運転に戻りたいと思います。








昨夜、水難事故に遭遇しました。

これを書くかどうかはとても迷いましたが、少しでも不幸な事故を防ぐために皆さんに知ってもらいたいのでブログに書き記します。




深夜0時過ぎ。
釣り仲間と福島県いわき市内の漁港で釣りをした後の帰り道、いつものように地元の北茨城市の大津港の港沿いの道路を走っていました。
暖房の影響で窓が曇ったため、窓を少し開けて走行していると一瞬、

ウアァァァッ!!!

という、もの凄い叫び声が聞こえました。
中学生か高校生が喧嘩でもしてるのかと思い、車を停めて仲裁に入ろうとするも、周囲には誰もいない。
首から下げていた釣り用のライトで周囲を照らしてみると、船のすぐ側に人の顔らしき物が見えた。
まさかと思い、近づいてみると間違いなく人。
若い男性だ。

『大丈夫か!?』

​と声をかけるも無反応。
目はカッと開いてただ浮いているだけ。
数秒後に

『ウアァァァ!』

と再び叫ぶ男性。

すぐに船に飛び移って駆け寄り、

『大丈夫か!?今引き上げてやるから手を伸ばせ!』

と再び声をかけるも反応がない。
それどころか、限界を迎えてしまったのか完全に顔が水に沈んでしまった。
マズいと思い、すぐに船の上から男性を掴んで顔を水から出るように引っ張った。
しかし、重くて船の上に引っ張り上げることが出来ない。
重すぎて自分の腕も長くもちそうにない。

だが幸い、民家がすぐ近くにたくさんある。
すぐに大声で

誰か助けてくれ!
人が溺れてる!
頼む!手を貸してくれ!

と叫びました。
しかし誰も来てくれません。

10分以上は叫び続けたでしょうか。
ひたすら泣きながら叫び続けていました。

するとようやく近所の人が2人出てきた。

助かった!

と思ったのもつかの間。

急いで119番通報して、こっちに来て一緒に男性を引き上げてくれ!俺1人では無理だから手を貸してくれ!

と言うと、

ごめん無理!そっちには行けない!

と言われた。

いいから早く!人の命がかかってんだ!

と言っても、

いやいや、無理!

と再び断られた。

不運なことに、駆けつけたのが船に飛び移れるほどの身体能力が皆無に近い中年女性と高齢の男性の2人だったのだ。
こればかりは仕方ない。

仕方ないので長期戦を覚悟する。
とにかくもう腕がパンパン。引き上げることも出来ず、泣きながら引っ張り続けて声をかけ続けるしか出来ない。

高齢男性の方に

誰か人を呼んできてくれ!

と言っても、

どうすりゃいいかわかんねえよ!

と言う押し問答が続くばかりで何もしてくれない。パニックになっていたようだ。

その間も男性に意識はなく、水と泡を吐くだけだった。
意識の無い相手を助けるのは非常に困難。

仕方ないので119番通報をし終えた女性に自分の家の電話番号を教え、父を呼んでもらうよう頼んだ。
一向に出て来てくれる様子もない近所の民家の人間達に向けて叫び続けるよりも自分の父なら絶対来てくれるという信じていた。
すると2〜3分で両親が駆けつけてくれた。
父がすぐ船に飛び移って来て、自分と2人がかりで必死に引っ張り、何とかようやく船の上に引き上げることが出来た。
父はサラリーマン時代に何度も救命処置の講習を受けて心得があったため、急いで水を吐かせる処置に移った。

その数分後に消防の人達が来た。
後から聞いたが、この時が0時45分だったらしい。

通報に当たってくれた女性が来てくれなかったらこの時点でも1人でただ叫び続けていたことだろう。
この女性には本当に感謝しかない。

その後すぐに警察と海上保安庁の方々が到着。
駆けつけた警官の1人がたまたま釣り仲間だったので、少しホッとした。

すぐに男性は近くの病院に搬送された。

それからは第一発見者であることと、救助にあたったということで消防・警察・海上保安庁に事情の説明を求められた。

ここでようやく近所の人間達が野次馬として現れた。

今更現れて野次馬した挙げ句にスマホで写真撮るのが人間のすることか。

正直、人間というものに心底ガッカリした。

そして、事情を説明し終えた頃に2時近かっただろうか。

警察の人達が、
『病院にて死亡を確認』
との連絡を受けていた。

目の前が真っ暗になった。

俺があの時こうしていれば。
俺がもっと早くつけていれば。
近所の人間が来てくれていれば。

自分の無力さに後悔の念しか湧いて来ない。
おそらく、彼の叫びは最後の力を振り絞って出していたんだろう。
今でも耳にこびりついて離れない。

そして、一緒に救助にあたってくれた父が激しい肋骨の痛みを訴え始めたため、父も病院に行くことに。
幸い骨折はしてなかったものの、重度の打撲だった。
救助にあたった際に船に肋骨が当たって負傷したらしい。

その間に自分は実況見分を行い、調書をとることに。
全てが終わったのは朝の4時半だった。

1人で40分近くも人を持ち上げ続けていたため腕はもちろん、全身に力が入らない。

なんとか帰宅するも、全く眠れなかったのは言うまでもない。

今回亡くなった男性は釣り人ではなかった。
上下スーツ(礼服)に革靴を履いた姿で、トレンチコートらしき物を羽織っていた。
身元がわかるような物は所持していなかった。
もしかしたら溺れていた時に海に落ちたのかもしれない。
そのため、未だに身元はわからないようだ。
追記・どうやら近所に住む24・5歳の青年で、酒を飲んだ後だったとのこと。

警察が言うにはポケットに車のキーがあったらしく、周囲を探してみたが、そのキーの車種は停まっていなかった。
亡くなってしまった今、なぜ港の船着場で溺れていたのかは今となってはわからない。

ただ言えるのは、
海という自然の前で人間はあまりに無力。
そして助ける側も人間であり、1人では無力。

発見して救助にあたったのが俺ではなく身体を鍛え抜いた腕力の凄い人だったら助かったかもしれない。
もっと近所の人間に聞こえる大声を出せる声量の持ち主だったらもっと助けが来たかもしれない。
助けられなくてごめん。
俺よりも若いだろうに。
これからまだまだ長く楽しい人生が待っていただろうに。
俺が非力なせいで結果的に死なせてしまった。
本当に申し訳ない。
自分の無力さに心底腹が立つ。
いざとなったら何も出来なかった自分が嫌になる。俺が死ねばよかったのに、とすら思える。
未だ一睡も出来ずに数分ごとに彼の顔が思い浮かんでくる。
その度に涙が止まらないんだ



最後に。
このブログを読む人の大半は釣り人だと思うので言わせて下さい。

ライフジャケットは必ず着けよう。
いちいち着るの面倒かもしれないし、値段も高いから着ないと言う人達。
落ちてからじゃ本当に遅い。
些細な手間と数千円をケチったせいで死ぬかもしれない。


追記

磯・サーフ・河川などで釣りをする人は
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このように固形の浮力体が入っているフローティングベストを着るのが常識だ。

漁港で軽装でライトゲームをやる人や陸っぱりでバス釣りやる人は

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こういった膨張式のライフジャケットでもいいので、絶対買おう。

理想は膨張式よりも先ほど紹介した固形の浮力体が入ったライフジャケットが1番ではあるが。

どちらのタイプのライフジャケットもアマゾンをはじめとする各通販サイトで数千円で買えるんだから。
命を守るためには安い投資だ。
足場の良い所でライトゲームをやる人も絶対に着けた方がいい。
何度も言うが、たかだか数千円で買えるんだから。
ライフジャケットをつけていれば100%助かるとは言わないけど、助かる確率は上がる。
あまり言いたくはないが、万が一助からなくても浮いていれば遺体を発見してもらえる確率も高くなる。
遺体が見つからないと生命保険がいつまでも下りず、遺族を苦労させてしまうからね。
必ず自分の名前と自宅の連絡先を書いたライフジャケットを着用しましょう。

追記終わり。



自分は大丈夫と思うのは大間違い。
今回亡くなった男性が溺れていたのは、どこの港にでもある、みんながライトゲームをするような、常夜灯が近くにあるごく普通の船着場。
岸から3メートル程の場所で溺れてたんだ。
普通はあまり危ないとは思わない、みんなが油断してしまうような場所だ。
そんな場所でも人は溺れ・死んでしまう。
だからさ、ライフジャケットは絶対着けよう。

釣り人以外の方は、不用意には水辺に近寄らない方がいい。
ちょっと海の中を覗き込もうとした時につまずいたり、すべったりして落水してしまうかもしれない。水辺に近づくなら細心の注意を。


そしてある意味では1番危ないであろう、ライフジャケットや防護アイテムを装着して万全の状態で臨んでいる方。慢心してる人が多いと思う。油断は禁物。
今回のようにすぐそばに民家がある場所で溺れて叫んでも誰も来てくれないことだってある。
救助にあたった人間が周囲に大声で叫んでも人が来てくれるとは限らない。

俺の叫びを聞いて駆けつけてくれた女性は、溺れていた男性の叫び声もしばらく聞こえていたらしいが、
また外で若者が騒いでる
​と思って無視していたらしい。
おそらく助けに来てくれなかった近所の人達もそういう認識だったのだろう。
あとは深夜だったから寝ている人も多かっただろうし。
ましてこのご時世、トラブルに巻き込まれたくないから触らぬ神に祟りなし​と無視を決め込む人も少なからずいるだろうし。

今回みたいに近くに民家があっても、
大声で助けを求めても誰も来てくれないことだってある。

いくら完全装備で釣りをしても、油断して怪我をしたり溺れてしまえば自分では何も出来なくなるかもしれない。

もしそこが波の音が全ての声をかき消す磯や砂浜だったら?

例え静かな河川でも、周囲に民家がなかったら?

皆さんはどうしますか?

​おそらく何も出来ないと思います。
人間って、自然を前にするとそれだけ無力なんです。

正直、俺は恐くなった。
ダサいと思われるかもしれないけど、釣りどころか水辺に近づくという行為自体が今は恐い。
意識なく眼を開ききって叫んでいた彼の顔を俺は一生忘れられないだろう。

釣りに行く時は完全装備は当たり前。
でもね、本当に最強の装備は

油断・過信しない人間側の気持ち
なんだと思う。

今回の事故で、釣り場で何かあったらそうそう助かるもんじゃないなと思った。

助かるのはほんの一握り。
いや、奇跡に近いんじゃないだろうか。

だから、これを読んでいるみんなにはくれぐれも気をつけて欲しい。
何かあってからでは本当に遅い。
自分の人生はそこで終わってしまうし、
そうなれば遺された家族はもちろん、
救助にあたった人間、消防、警察、海上保安庁、病院の人達、たくさんの人の心に深い深い傷を残すということも覚えておいて欲しいです。

本当、
他人事じゃないからね?

​あなたの身近にも危険はたくさん潜んでます。
とにかく油断だけは絶対にしないで。

自分は救助で全身の力を使い果たして手足に力が入らない状態。
そして共に救助にあたった父も肋骨を負傷したため今日の営業はお休みさせていただき、かろうじてほんの少しだけ力が入る指先でこれを書いています。

参考までに、ネット上に載っていた水難事故に遭遇した際の対処法を貼っておきます。

救助方法と応急手当て。

水難事故に遭遇したら。







なるべく多くの方に水辺の恐さを知ってもらいたいので拡散していただけると助かります。



















今回亡くなられた男性の御冥福をお祈りします。


俺が無力だったせいで本当に申し訳ない。
















追記

今回の事故について、事故自体が嘘であるかのような事を言ってきた方がいます。
嘘であると思う方は北茨城市消防本部のホームページをご確認ください。


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0時31分ころ発生した

となっているのは、駆け付けてくれた近所の女性の方が119番通報した時間が0時31分だからです。
発生した時間=通報した時間ということらしいです。








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